心と体を軽くするコツは「補」&「瀉」の両方を上手に使うこと
中医営養学(薬膳の世界では、栄養は”営養”って書きます)では
食べ物で病気を治す時の方針として
『補』『瀉』『調』の3つを考えます。
漢字で見ると難しく感じるんですが、
逆にいうと、治療方針は基本的に3つしかないということ。大きく分けて、ですけど。
簡単にまとめると
『補』(ほ)は補って体質を改善する
『瀉』(しゃ)は要らないものを取り除く
『調』(ちょう)はバランスを取って調整する
この3つをうまく使い分けて、状態に合わせた正しい方法で、時には組み合わせて
からだの状態を良い方向に持っていきます。
はじめて『補』『瀉』の考え方を知ったとき、すごいなぁって思ったんです。
これね、『補』『瀉』って本当に大事で
ポイントは”そのどちらもとても重要”ということ。
どうして『どちらも』ってところを強調するかというと、
ひとは「からだを健康にしたい、からだにいいことをしたい」と思った時に、
「何かいいことをしよう」と思って
自分のからだに「プラスする」ことを一番に考えがちです。
からだにいい栄養を補おう、いいことをプラスしよう、みたいな感じですね。
つい、補法が1番に来るもの。
だけど本当は
からだにとって不要な物を捨てたり、
もっと言うと、からだにとって悪い習慣を断ち切ったりする方が
最終的にうまくいくこともたくさんある。
捨てるからこそ、次に補うものの力が存分に発揮されるということもある。
”補う”という思考だけでは限界があるってことですね。
例えば、私は
「からだに余分な”水”が溜まりやすい」体質なんですけど、
この場合、余分な水を抜く方法(利湿・利水)が大事で、
これは『袪邪』といって『瀉』の一つです。
30年以上生きてると、
食べたものや習慣も含めて、
「捨てるべきもの」もたくさん抱えて生活してるんですよね。
『瀉』という感じを見ると少し難しく感じるかもしれないけど、
例えば辞典とかで「瀉」を引いてもらうと、
水が流れ出す、とか
からだの外に流れ出る、
みたいな意味でヒットすると思います。
からだの外に流れ出るのは下痢とか嘔吐とかそういう感じ。
実際に、
「止瀉薬」(瀉を止める薬)って言うと、一般的には下痢止めを指します。
え、じゃあ『瀉法』ていうのは、下痢を起こすことなの?って思うかもしれないですけど、
まぁ、その通りなんですね。
軽い下痢が起こることで改善する症状や病状があって。
例えば、子どもの発熱とかで、
なかなか熱が下がらない場合に
「お通じをつける」ことによって解熱することがあります。
お腹の中の悪いものが出た途端、熱が下がった!みたいなパターンです。
からだの中に毒素を溜めておくことってよくないので、
そういうときに瀉法ってとても有効なんですよね。
現代人って結構いろんな毒素をからだに溜めたりして、
(例えば暴飲暴食とかストレスとかも含めて)
それを出すとスッキリ!みたいなことってあるはずなんです。
そういえば、玄米菜食に重きをおくマクロビは、
結構『瀉』の世界観があるなぁ、と。
玄米や菜食などで、たくさん食物繊維をとると、
からだで消化されなかった食物繊維が
腸に溜まった要らないものも一緒に出してくれる。
腸のお掃除をしてくれるんです。
(食物繊維をとり過ぎてしまった場合
お腹が弱い人だと下痢になりやすかったりします。)
食べ過ぎ、暴飲暴食などで、からだに毒素が溜まってるなーっていう時なんかには
玄米やお野菜、食物繊維豊富な
キノコやごぼうなどをメインに献立を立てるのもひとつの方法ですよね。
漢方でいうと、日本漢方の一派である『一貫堂漢方』も
『瀉』に強いという感じがします。
一貫堂でよく使われる漢方で
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)とか通導散(つうどうさん)とか
詳しい効能は省きますけど、
どちらも『通』っていう字が入っていて、
これはすなわち
「通す」「流す」「瀉す」みたいなイメージ。
最近注目されてる「断捨離」もある意味
『瀉』の世界観を感じています。
情報だって一昔前は、たくさん持ってる人がすごいと言われたけれど
今は、要らない情報をそぎ落とせる人の方が断然、頭の中も心の中もクリアなはず。
だから、『瀉』上手って軽やかだと思っています。
自分に何かをプラスしたら、瀉する部分はないか考えてみる。
そして、そこで終わらない。
いろんなものを捨てて軽くなって、でも捨てすぎて空っぽになったらダメで、
そのときはまた、自分に合うものをプラスしていく。
このときプラスするものは、捨てる前に持ってたものよりも、より純度の高いものになっていると思うのです。
だから、補瀉は両方大事で巡り巡っていて、その都度うまく調整して…その繰り返し。
そうしているうちに、心と体がどんどん軽くなっていく。
そんなイメージを持っています。
小さく見えることでもひとつずつ積み重ねて
どんどん自分とのお付き合いが上手になっていくといいですね^^
ではまた。
ごきげんな日々を過ごせますよう、今日もぼちぼち!
薬膳はじめの第一歩にぜひ。