《季節の薬膳》ムシムシする梅雨をごきげんに過ごすための薬膳レッスン
薬膳の世界では、「天人合一(てんじんごういつ)」といって、自然界と人間は切っても切り離せない関係であると考えます。
季節の移り変わりなど自然界の影響を多大に受ける私たちの体と、上手にお付き合いをしていくコツが「季節の薬膳」に詰まっています。
季節によって食べるものや過ごし方を工夫し、365日を健やかに過ごす「ごきげん美人さん」を一緒に目指してみませんか?
今回は季節の薬膳《梅雨編》をお届けします。
目次
ムシムシしやすい梅雨をごきげんに過ごす季節の薬膳
梅雨のダメージを引き起こしやすい”湿邪”
「梅雨時期にからだのダメージを受けやすいなぁ」と感じることはありますか?
例えば雨が多い時期になると
- 食欲がなくなる
- 吐き気がする
- からだがだるい、重い
- 気分が落ち込みやすい
- 下痢しやすい
- むくみやすい ・・・
こういった不調に悩まされたりしませんか?
これらの不調をもたらす病邪のひとつに”湿邪”(しつじゃ)があります。
梅雨時期は少なからずこの”湿邪”の影響を受けやすいのです。
自然界に起こっていることは、からだの中でも起こると考えるので、
当然からだの中にも、”雨降りが多く湿気たような感じ”になるのでしょうね。
湿邪の特徴
まずはこの”湿邪”の特徴について。
◼︎”重濁”
重苦しい。重くて濁るイメージ。
この影響があると、からだが重だるく感じて、気分が落ち込んだりしやすいです。
◼︎”粘稠”
ねちょっとした感じですね。
この特徴はからだの分泌物や排泄物にみられやすく、例えば便がゆるくなったり、女性であればおりものに不調が出たりします。
◼︎”沈降”
下に沈んでいく特徴があるので、下半身に不調が出やすいと言われます。
例えば、下痢気味とか足のむくみとか。
それから、湿邪による不調は、”治りにくく、再発しやすい”という顔を持っています。
例えば水虫とか、長引く下痢でいつまでもスッキリしないような感じ。
どこまでこういった湿邪の影響を受けるかは、個々の体質や環境によっても違うのですが、
(もともとからだが乾燥している方にとっては、湿度の高い時期の方が過ごしやすい、と感じることもあるでしょうし)
雨の日や梅雨のシーズンを思い返してみて、
なにか思いあたることがある方は、少し先読みして、湿邪に対処していきましょう。
うまく除湿できれば、この”湿邪”によってもたらされる不快感を和らげることができるはず。
暮らしの中でできる除湿
日々の暮らしの中で気をつけることがあるとすれば
除湿器を使うもよし、とにかく風通しをよくすること。
例えば寝具を麻のものに変えるなど、湿気を逃してくれるような素材のシーツにこだわってみてもいいですね。
もちろん洋服も、風通しのいい、ゆるめのものを選ぶとか、肌触りのいいものを身につける。
雨の日は替えの靴下を持って出かけるとか、こまめに取り替えられるようにしておくとさらにいい。
雨の日が楽しくなるお気に入りの傘や長靴、レインコートを、用意しておくのもいいかもしれません。
カラッとした心と体をつくる
さて、梅雨時期には”湿邪”の影響を受けやすい、とお伝えしました。
この「湿邪」は五臓(肝・心・脾・肺・腎)の中の「脾」にダメージを与えます。
「脾」といえば、胃腸の働きを含むので、「湿邪」の影響を受けると、胃腸が弱ってしまったり、食欲が落ちたり・・・
「脾」はからだに必要な「気・血・水」を生み出す場所でもあるので、「脾」が弱ることで大事なエネルギーや栄養が生み出せずにパワーダウンしてしまったり。
なんせ雨が続くとじめじめして、心と体のパワーが落ちがちです。
梅雨の薬膳と養生では、からだの水はけをよくして、
カラッと過ごせる心とからだをつくるのが目標となります。
そのために心がけたい食養生としては、
「からだの余分な水を出してくれる食材を取り入れること」と
「脾を養う食材を取り入れること」。
こういった食材をうまく活用していきたいです。
からだの余分な湿や水を外に出す食材
麦類:大麦、はと麦
豆類:小豆、黒豆、緑豆
野菜:エンドウ豆、とうもろこし、枝豆、レタス、アスパラガス、空豆
瓜類:きゅうり、冬瓜、メロン、すいか
貝類:あさり、しじみ、はまぐり
・・・・・・など
ざっくり、豆類とウリ類、と覚えておくといいかもしれません。
お野菜の中でも、みどり色のお豆は、からだの水はけをよくしてくれるものが多いです。(枝豆やそら豆など)
豆類に比べるとウリ類はからだを冷やしやすいので、冷えやすい方、胃腸の弱い方には豆類をおすすめしていますが、そうでなくても、この時期なるべくからだを冷やさない方がいいかと。
ウリ類解禁はじっくり見極めるのがいいかな?と、個人的には感じています。
からだを冷やすもの、冷たいものは、「脾」を痛めてしまう原因にもなってしまいます。こちらはのちほど詳しくお話します。
健脾作用のある食材
また、「脾」をしっかり養っていくため、”健脾”と言って、脾の機能を補う効果をもつ食材を取り入れるのもおすすめです。
豆類
穀類:米、黒米、玄米、ハトムギ、もち米
芋類:さつまいも、じゃがいも、長芋
野菜;おくら、なす、にんじん、枝豆、そら豆、とうもろこし、ブロッコリー
種実類:アーモンド、落花生、栗、なつめ
果物:オレンジ、ライチ、りんご
貝類:うに、すずき、はも
・・・・・・などなど
豆類、芋類、そしてお米などの穀類。
こういった自然の甘味が、私たちの「脾」を丈夫にしてくれるんですね。
もちろんこれらに偏りすぎるとかえって「脾」に負担がかかるので、お魚やお肉、野菜などもバランスよくいただきましょう^^
そして、「脾」に負担をかけないためには「ゆっくりよく噛んで食べること」。
特に、胃腸の調子がよくないときには、「あたたかくて柔らかいもの」を。
湿邪の影響を強く受けやすい場合は、脂っこいもの、味の濃いものは避けていきたい季節です。
《梅雨の薬膳の献立術》「脾」を養う3原則
「湿」の影響を受けやすいのが五臓の中の「脾」。
「脾」というのは消化や吸収に関わる部分で、「胃腸」のイメージを持っていただくとわかりやすいと思います。
湿度が高いと「脾」の不調が生じやすいです。
雨降りの日が多く、湿度の高いシーズンはしっかり「脾」をいたわってあげること。
「脾」を養う3原則は運気をあげる?
「脾」をいたわるための3原則は、
⑴冷たい物を控える
⑵甘いものを控える
⑶脂っこいものを控える
実は「脾」を守ると運気も上がる、と私は薬膳の先生に教わりました。
そもそも「冷え」を嫌う中医学ですが、五臓の中の「脾」を冷やさないようにする、というのは大きなテーマのひとつだと思います。(中医学でいう「脾」は西洋医学でいう脾臓とは捉え方がが異なります。)
「脾」は消化吸収に関わって、気・血・水を生み出す場所。
「上に持ち上げてその場所にとどまらせる」というような働きもあるので、リフトアップの臓とも言われたりします。
そして「脾は暖を好む」という言葉の通り、「脾」は冷えると、うまく機能できなくなってしまいます。
薬膳の先生が、「脾」をちゃんといたわってあげないと(=脾虚になると)
「顔の肉が下がって、胸が下がって、おしりが下がって、運気も下がる!」
とおっしゃっていたのを思い出します。
これは言い換えると「脾」をしっかり養うと、口角も胸もおしりも上がって、さらには運気も上がっていく!ということですよね^^
上にも書いた通り、「脾」は暖を好むので冷えてしまうと「脾」の働きがうまく発揮できません。
また、甘いものや油っこいものの取りすぎも、「脾」の大敵である「湿」を生むため、「脾」に負担をかけてしまいます。
せっかく「脾」が、上に持ち上げる力をを持っていても、その力が発揮できないままだと、どんどん下がってしまいます。
これが「顔の肉が下がって、胸が下がって、おしりが下がって、運気も下がる!」という言葉につながるのです。
3原則にもうひとつ加えるならば、「脾」に残業ばかりさせないように、普段から”腹八分目”を意識することも大切です。
腹八分目の目安は、食べた後も食べる前と同じくらい動けるかどうか。このあたりを普段から意識できるといいですよね。
3原則に戻ります。
◼︎冷たいものは、キンキンに冷えた飲み物や食べ物。どうしても、という場合は温かいものも一緒にいただきます。
◼︎甘いものは、砂糖がたっぷり入ったようなお菓子。普段よくお菓子を食べている、という方は、まず今日、昨日食べたお菓子よりも少ない量でSTOP!
一気に減らすよりも、「昨日より少し減らしてみよう」でいきましょう。
自然な甘み(穀類や芋類、豆類など)は脾に優しいですが、それでも摂りすぎると「脾」を弱らせてしまいます。野菜や魚や肉もバランスよく食べるようにしたいですね。
◼︎脂っこいもの、味の濃いものもからだに「湿」を溜め込みやすいです。
こちらも一気に変えるのではなく、「昨日よりも薄めの味付けにしてみよう」で、どんどん慣らしていきましょう。慣れると、自然の甘みや薄味が本当に美味しく感じられるようになっていきます。
「脾」に負担をかけたくないならなるべく薄味で、消化に良い調理法を選ぶこと。
そしてよく噛んで食べること。
そういったことが普通になると、「普通」にしているだけなのにどんどん、運気も上がっていく!
そんな風になれるのかもしれませんね。
この3原則を頭において、ご機嫌なレイニーシーズンにしていきましょう。
梅雨をごきげんに過ごすための心のケア
中医学には、五臓それぞれに関連する感情があると言われています。
梅雨時期には五臓の中の”脾”(胃腸の働きなどを含む)が、ダメージを受けやすいのですが、”脾”に関連する感情は”思”。
これはクヨクヨと思い悩むと”脾”が痛みやすく、逆もまたしかり、”脾”が弱っていると、思い悩みがちになる、ということです。
湿度の高い時期はただでさえ”脾”が弱りやすいのに、もしここでなにか思い悩むようなことがあれば、さらに不調が出やすくなってしまいます。
ですので意識的に、心配事や思いつめるようなことは避けていきたい季節です。
心も体も、リラックス!
好きなことや趣味を思いっきり楽しむ時間は持てていますか?
旅行の計画を立てたり、楽しいことを企画するのも、気分転換になっていいですよね。
夏になったらやりたいことを書き出すだけでも◎
また、つい思いつめたりするときって、頭だけが働いて、からだは動いてないときも多いです。
ちょっと気分的があんまりよくないな…というときは、何も考えずにからだを動かしてみるのもひとつかも。
おすすめはお掃除!意外と家の中でも、動き回るとスッキリ。
断捨離でおうちもスッキリ。綺麗なお部屋ににっこり。
6月あたりはちょうど、年末の大掃除から半年経っていますので、この時期をうまく利用して掃除をしておくと、年末が少し楽かもしれませんね。
梅雨明けまで、なるべく心も体もカラッとした状態を保てるように。
そうして、ごきげんな夏を迎えられますように。
《まとめ》梅雨の養生に取り入れたい食材たち
- からだの余分な湿や水を外に出す食材:豆類(特に緑色のお豆)、瓜類、あさりやしじみなど。
- 「脾」を養ってくれる食材:豆類、芋類、お米などの穀類。
こういった食材を、薄味でやわらかく消化しやすい形に調理し、よく噛んで食べること。
【冷たいもの・甘いもの・脂っこいものを避ける】3原則も忘れずに。
梅雨の薬膳のキーワードは、胃腸にやさしく、心と体をカラッとさせておく、豆類・瓜類、薄味でよく噛む、心と気持ちのケア、思いつめない生活の工夫…
簡単なことからはじめていきましょう。
日々の食べ方・過ごし方を工夫して、ごきげんな梅雨となりますように。